ミクリの誘い
「綺麗な金髪だね。私にはまるで誘っているかのように見えるよ?」
マツバは目を開いた。
「・・・・修行中、なのですが」
ミクリの服は朝露のせいか、ひどく濡れていた。マツバの修行場であるこの森まで、わざわざ徒歩で来たらしい。
なんともご苦労な話である。
「何の用ですか」マツバは静かに尋ねた。
「まさか僕の髪の毛を弄るために山道を駆け上って来た訳じゃないでしょうに」
ミクリはマツバの髪の毛からそっと手を離した。
「――それはそれで楽しいけどね。まぁいい。単刀直入に言うが・・・今日明日の二日間、私と付き合って欲しい」
「・・・・は?」
マツバはあきれてぽかんとした。
「何故僕が?その・・・ダイゴさんはどうしたんです??」
そもそも、何故ジョウトに来てまでこの人は・・・。
ミクリは微笑んだ。それはそれは美しい微笑みだった。
「実は今日、私はダイゴと会う予定だった。しかし、急にドタキャンされてね」
「・・・・」
「私が理由を聞くと彼は悪びれることも無く、こう言ってきた。
『実はユウキ君とジョウト旅行に行こうっていう話があってさー。
ホラ、ミクリとの約束はいつでもいけるけど彼とはなかなか難しいしー』と。」
「・・・・」
「聞けば彼らはエンジュを観光するらしい。勿論、今日と明日ね」
「・・・あのー」
「まぁ、そういう訳で私はとても暇なんだ。で、ジョウトに行ってみようかなーと思って来てみたものだが
正直一人では寂しいし、道も分からなくてねぇ。ねえ、マツバ君?道案内も兼ねて一緒に行動してくれないか」
「・・・何を企んでいるんですか」
「さぁ?」
ミクリはただ笑って肩を竦めた。
普段のマツバなら、絶対断る。
この人と行動したらろくなことがない。
しかし・・・なんとなくミクリの微妙な気持ちがわからなくもない。
ミクリは割と余裕のある人だ。
ダイゴが誰と一緒にいようが、誰と出かけようが、彼は高みから見物するような気分でいる筈だ。
『相当久しぶりに会うつもりだったのかな・・・』
そんな考えがマツバの頭をよぎった。
なんというか、あれだ。
僕もよく経験する、あれだ。
「・・・・分かりましたよ。どうせ僕が駄目なら他を当たる気なんでしょう。」
ミクリは我が意得たりとばかりに笑った。
「君なら承諾してくれるものと信じていたよ。さて、これを見てくれ給え。これが今日彼らが行く場所なんだが・・・」
後日
「ごめんね、ユウキ君。さっぱり堪能できなくて」
「え、いいんですよ、ダイゴさん。また次の機会もありますし」
ホウエンに帰ってきたダイゴとユウキの二人は、もう、何と言うか、へとへとだった。
「おかしいですね。天気予報では晴れだって言ってたのに何故か局地的大雨になるし」
「雪とあられとひょうまで降ってきたしな。なんだったんだ、あの天変地異は」
「途中でマスコミが駆けつけてきた時も困りました。誰が密告したんでしょう」
「ああ。宿で隣の部屋から、お経と線香の香りがしてきた時は凄くびっくりしたな・・・」
「あれは眠れませんでした。オカルトマニアの集会でもあったんでしょうか」
二人はため息をついた。
「・・・あ、ユウキ君」
「はい?」
「写真見よう?散々だったけど結構いいの撮れてる筈だよ」
「あ、はい!」
しかし次の瞬間、ダイゴは凍りついた。
「う、うわ・・・・!」
「ど、どうしたんですか!!?・・・うわ!ご、ゴーストポケモンが一杯写ってる・・・!」
「い、いや、・・・・そ、そうじゃないんだ・・・!」
ダイゴの目線の先にいたのは、
全ての写真の隅っこにことごとく写りこんでいる・・・
ミクリの姿であった。
***
水彩画です。
GRINDA、文才はありません。
まっつんが紫陽花に埋もれているのは、もともと
ミクリ様がまっつんを押し倒したような構図だったからデス・・・。
ちょっとキラキラしすぎだ。